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- 黒田麻衣子MAIKO KURODA
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株式会社東横インに2002年入社。
出産・育児のため退社後、2008年に副社長として復帰し、2012年に社長就任。
2022年には、「全国ネットワークの基地ホテル」を掲げ、ブランド再構築を推進。
「東横INN体験を感動レベルへ」を合言葉に、「おもてなし規格認証『紺認証』」に挑戦。
2024年6月、一企業最多333店舗で取得に至る。
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- 髙田旭人AKITO TAKATA
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東京大学卒業後、証券会社を経てジャパネットたかたへ入社。
バイヤー、コールセンター、物流など主要部門の責任者を歴任し、2015年にジャパネットホールディングス代表取締役社長に就任。
通信販売事業に加え、スポーツ・地域創生事業にも取り組み、現在はホールディングスを含む7社の代表を務める。
創業者からのバトンと、
現場のパワーを引き出す組織の未来
今年2026年にともに創業40周年を迎えた、株式会社東横インと株式会社ジャパネットホールディングス。
奇しくも「1986年1月創業」「2代目経営者」など数多くの共通点を持つ両社のトップである黒田麻衣子社長と髙田旭人による対談が実現しました。
強烈なリーダーシップで会社を率いた創業者からビジネスモデルと想いを受け継ぎつつ、自らの手で新たな企業文化を切り拓いてきた二人が、これまでの歩み、独自の組織論、そして未来の戦略を語り合います。
1986年1月、同じ月に産声を上げた
両社と「危機の記憶」
黒田社長、本日はありがとうございます。実は以前、10年〜15年ほど前にお会いしたのが最初の出会いでした。
今回、改めて40周年という節目でお話しするご縁をいただき色々調べてみたところ、本当に共通点が多くて驚きました。
まず、1986年1月という創業の「月」まで全く同じなんですよね。
ええ、本当に同じ時代をずっと歩んできた同級生のような存在ですね。
さらに、お互いに強烈なリーダーシップを持った創業者である父親からバトンを受け継いだ「2代目」という境遇も同じです。
私の父も、一代で会社をここまで大きくした人ですから、容赦なく本当に厳しい人でした。
黒田社長のご経歴を拝見すると、一度ご結婚やご出産を機に退社された後、再び会社に戻られていますよね。
どのようなきっかけがあったのでしょうか。
ドイツにいた時期に会社で不祥事が重なり、創業者がすべての役職を降りることになったんです。
その時、「自分が戻ってやるしかない」と強い覚悟を持って2008年末に復帰しました。
当時は子どもたちもまだ幼稚園の年長と年少でしたので、自分の母や叔母、夫の母など、周囲にたくさん手を借りながら必死に乗り切っていましたね。
本当に頭が下がります。実は、私がジャパネットに深く関わるようになったきっかけも、全く同じように「会社の危機」だったんです。
2004年に弊社で大きな情報流出問題が起きた際、私は海外から戻ってすぐに調査委員会に入り、半年間かけて真相究明のためのデータ調査チームを率いました。
気づけば、会社が潰れそうな状況の中で社員と一体になってがむしゃらに動いていて、それが本格的な入社へと繋がっていきました。
お互いに、会社が本当に大変なタイミングで強い覚悟を持って現場に入ったという点も、非常に似ていますよね。
「今、社長になりなさい」
──創業者からのバトン、
女性の活躍
黒田社長は2012年に社長に就任されていますが、経営を引き継がれた当時はどのようなタイミングだったのでしょうか。
当時はリーマンショックなどで業界全体が苦しい時期でしたが、2011年の東日本大震災の復興需要をきっかけに一気に持ち直したんです。
そのように業績が上がり始めているのを見て、父から「今なれ」と言われました。
会社に勢いがあるタイミングで引き継がせようという、父なりの配慮だったのだと思います。
東横イン様といえば、支配人の「98%が女性」という点も非常に特徴的ですよね。
実は、男女雇用機会均等法が施行された直後の人手不足の時代に、ベンチャー企業だったこともあり女性を採用してみたところ、父(創業者)が「これは女性に向いている仕事だ」と確信したのが始まりです。
自ら雑巾を持って率先して掃除をするような、きれいで安心な環境づくりへの意識は、やはり女性の強みが活きる分野でした。
現在は男性の応募も増え、ホテリエ(フロントスタッフ)からキャリアアップして支配人になる男性も出てきていますが、基本のカルチャーは創業期から受け継がれています。
素晴らしいですね。実は弊社も、社員の男女比は6:4〜7:3ほどで女性が多く、フラットに実力で選考していくと自然と女性が多くなる環境です。
弊社では「男女関係なく、ライフイベントを経ても全員が活躍できること」を大切にしています。
産休・育休で数年間休業した社員がいたとしても、その間に培った人生経験や生活者としての視点は、復帰後に必ず大きな強みになって会社に還元されると考えているからです。
東横イン様では支配人の方々の年齢層やご家庭との両立について、何か基準はあるのでしょうか?
新任の支配人の場合は、基本的にお子様が中学生以上、あるいは小さくてもご家族のサポートが得られる環境にある方、という点を一つの目安にしています。
ホテルは24時間営業のため、夜中の急な呼び出しもありますので。
やはりホテルの責任者という大役ですので、ご自身のライフステージと相談しながらチャレンジしていただいています。
東横インのこだわりと
「あえてやらない」独自戦略
東横イン様は業界の常識に縛られない非常にユニークな独自戦略を貫かれていますよね。
そうですね。たとえばフロントスタッフの勤務形態としては、「25時間勤務(1回の出勤で丸1日働き、その後、明けの日も含めて3日間休む変形労働時間制)」というスタイルを伝統的に導入しています。
まとまった休みができるため、プライベートや家庭との両立がしやすいと、多くのスタッフに支持されている働き方です。
また、私たちはもう一つ重要なこだわりとして、お部屋の清掃スタッフも全員自社で直接雇用するという体制をとっています。
「ここは自分たちのホテルなんだ」という強い誇りと責任を持って、お客様のためにベッドを整え、お部屋を清潔に磨き上げてほしいからこそ、この形にこだわっています。
さらに、近年ホテル業界で主流となっている、繁忙期に価格を大きく引き上げる「ダイナミックプライシング(価格変動制)」も、私たちはあえて導入していません。
いつ、どの店舗に泊まっても、安心できる「いつも変わらない清潔さと、適正で誠実な価格」をお客様に提供し続けること。
これこそが、創業期から変わらない東横インの信頼のベースなのだと考えています。
素晴らしい信念ですね。商品の仕入れから制作、コールセンター、そして物流・設置までを「内製化」している弊社の考え方とも非常に深く通じると感じます。
すべての現場一人ひとりが誇りを持って自ら動くからこそ、お客様に本当の価値が伝わるのだと改めて感じています。
現場のパワーを引き出す組織の
「新陳代謝」と「仕組み」
さらにユニークなのが、支配人を兼務しながら務めるエリアマネージャーの方々の「任期は3年」という交代制ルールですよね。
はい。ずっと同じ人が固定で支配人を続けながらエリアを見ていると、常に「見本」であり続けなければならないプレッシャーから疲弊してしまいますし、次に出たい若い世代が育つチャンスを塞いでしまいます。
あえて交代制にすることで組織の疲弊を防ぎ、任期が終われば一度フラットに戻って、多くの人に経験という成長機会を提供しています。
組織の健康と次世代の育成を両立させる、非常に合理的な仕組みですね。
弊社も2024年から長崎スタジアムシティ内にある240室規模のホテル事業を初めてスタートさせ、各地の現場でスタッフの方々がバラバラに動くホテルマネジメントの難しさを改めて実感しています。
東横イン様では、本社の意図や理念をどのように末端まで浸透させているのでしょうか?
基本スタンスとして、本社は支配人の教育に集中し、支配人以下のスタッフへの教育はそれぞれの支配人に一任しています。
その代わり、最も大きい仕組みとして「お客様アンケートの徹底的なフィードバック」を全社共通で整えています。
宿泊日やお部屋番号から担当のホテリエや清掃スタッフを特定し、「ここが褒められていたよ」「ご指摘があったよ」といった具体的な内容を支配人から丁寧にフィードバックして、良い働きについては昇給や賞与にも繋げています。
お客様の声を直接現場に届ける仕組みも、まさにジャパネットと同じです。
弊社でも、お客様からの声はコールセンター内での共有はもちろん、バイヤーや制作など他部署にもリアルタイムに共有し、サービスや商品の改善に繋げています。
創業者である「父親」との
向き合い方と、仕事を楽しむ姿
仕事と育児の両立において、これまで悩まれた時期はありましたか?
毎日帰りが遅くなってしまうので、当時小学校5、6年生だった上の娘に「毎日遅くてごめんね」と改めて謝ったことがありました。
そうしたら娘は「いいよ、楽しいんでしょ?」と言ってくれたんです。
その言葉に、私はその後ずっと救われ、支えられてきました。
それは本当に素晴らしい娘さんですね。
私の家庭でも、妻が本当に休む瞬間がないほど一生懸命子育てをする姿を間近で見ているからこそ、頭が下がります。
真面目な人ほど罪悪感を抱えて自分を責めてしまいがちですが、黒田社長のように「仕事を楽しんでいる姿を子どもに見せること」の大切さは、多くの働くメンバーにとって大きな救いになると思います。
現在のお父様との距離感はいかがですか?
コロナ禍を機に完全に引退をしてもらったので、現在は月に1回ほど近況の報告に行く程度ですね。
ただ、これだけ順調に会社を成長させてきても、父から直接褒められたことは一度もありません(笑)。
最初のうちはアドバイスを求めていましたが、徐々に生きる時代の差による価値観の違いを感じるようになり、コロナ前後の時期はものすごく言い合いをしていましたよ(笑)。
やはりバチバチやられていたのですね! 私も同じようにぶつかり合いました。
ジャパネットの場合は、父が65歳、私が35歳の時に代替わりをしましたが、母が父に対して「後を渡すんだったら、絶対に院政は敷かないでね」と強く言ってくれていたおかげで、父は完全に会社から離れてくれました。
それから12年ほど経ちますが、私は一度も父に経営の相談をしたことがありません。
ただ、そのベースには「この会社が大好きで、創業者が作ってきたビジネスが人を幸せにしている」という絶対的なリスペクトが共通していますよね。
私も「目の前の父を喜ばせること」よりも「自分が全責任を持って会社を成長させ、後から『これで良かった』と思ってもらうこと」が大事だと結論を出して突き進んできました。
今では、父も一番の応援団になってくれていると感じます。
次なる40年へ。私たちが目指す未来
東横イン様の歩みを拝見していると、カンボジアでの小学校建設など、子どもたちへの支援活動にも力を入れられていますよね。
はい。お客様と一緒に募金活動を行い、現在は4箇所に学校を建てています。
以前はいろいろな分野でCSR活動を行っていましたが、最近はよりシンプルに、支配人たちも共感しやすい「子どもへの支援」へ領域を絞り込みました。
領域を絞ることで、より想いが深く浸透するわけですね。
ジャパネットでも、スポーツや地域創生といった新しい領域への挑戦を続けていますが、その根底にあるのは「今を生きる楽しさをすべての人にお届けする」というシンプルな想いです。
黒田社長が現場の声を徹底的に拾い上げて新たな企業文化を作られたように、ジャパネットもトップダウンからボトムアップへと変革を続け、社員全員が新しい価値を追求できる環境を磨いていきたいと思います。
本日は本当に貴重なお話をありがとうございました。
こちらこそ、同じ時代を走る仲間としてたくさん刺激をいただきました。
素晴らしい時間をありがとうございました。
40周年特別対談は終了です。
同じ時代に生まれ、未来へと向かって力強く
歩みを進める両社のこれからの挑戦に、
ぜひご期待ください。