エピソードストーリー01 チャレンジデー

Episode01

挑戦の1日、その舞台裏前編:その日を迎えるまで
掃除機の1日の販売台数においてアジア記録を樹立したこともある。一つの商品を、1日で、どれだけ多くのお客様に、いかに低価格で提供できるか。通信販売の限界に挑戦する「チャレンジデー」は、関わる一人ひとりにとっても、「挑戦する1日」である。

三度目の正直。

~バイヤーの挑戦

2015年の夏。バイヤーの町田は、強い意気込みとともに会議の場に赴いた。自分が担当する商品をチャレンジデーで取り上げてほしいと、社長らにプレゼンテーションするためだ。バイヤーは約1年をかけてメーカーと交渉、この日に備える。いい商品を見つけ、確保するだけではない。ときには、お客様の利便性を向上する工夫を加えた、「ジャパネットオリジナルモデル」を企画することもある。

過去2回、町田が推す電子辞書は採用されなかった。電子辞書はシニア世代に好評で、これまでも何度も紹介してきた。だからこそ、社長たちの目も厳しい。町田の機種は、これまで紹介したものとあまり変わらず、新しい価値をお客様に提供できないと判断されたのだ。

今度こそ決めたい。町田には勝算があった。今回、日本で編集された百科事典の業界初の搭載が決定、過去最多のコンテンツ数となった。町田は、電子辞書メーカーのオフィスで実物に触れ、項目の多さやビジュアルの鮮明さに圧倒された。気づけば、名前も知らなかったその百科事典全24冊を入手していた。

そのうち1冊を町田はプレゼンの場に持参する。ページを社長らに見せながらの説明だ。日本の編集で日本に関する項目がたくさんあること。挿絵や写真が豊富なこと。「シニアのお客様に、『目で見て分かる情報』を提供できるのは大きいですよ」。自分が本当にいいと思ったものを勧め、生活を豊かにする提案。それは、ジャパネットの姿勢そのものだった。その説明が、社長たちの心を動かす。

「これでいこう」。町田、三度目の正直だった。

必ず売り切るという使命。

~商材戦略の挑戦

商品は決まった。日にちも12月22日と決定。バイヤー町田は、当日展開する台数をメーカーと決めていく。チャレンジデーは、翌日に売り越すことができないため、24時間で売り切る量を綿密に割り出さねばならない。

また、販売量は膨大であり、メーカーのストックだけではとても足りない。そこで、町田はメーカーと交渉し、毎月製造するうちの一定量をチャレンジデー用に確保。これによって、メーカーのブランド力と商品力、ジャパネットの販売力に加え、「価格力」を加えることができる。

反面、ジャパネットが売る分を確保した販売量は、必ず売り切らなければならない。どんなメディアで、どれだけ広告を展開し、各メディアを通じて、どのくらいの売上を見込むか。これを厳密に算出し、各メディアの販売量の調整を行っていくのが、メディアミックスの氏田である。

氏田は、バイヤー、各メディアの制作部門とのすり合わせながら、最終的な販売量を決めていく。こうして、メディアを担当するすべてのチームが、「必ず売り切る使命」を負うことになる。

さらに、氏田は、ジャパネットメディアクリエーションとともに、メディア展開も考える。過去のキャンペーン実績などの情報をもとに、本当にそのメディア展開で売れるのか、その戦略を練っていくのだ。過去にジャパネットは、新聞2ページぶち抜きフルカラー広告を実現している。

2ページフルカラー広告は、極めて高コストなため実施されることは少ないが、チャレンジデーなら採算が取れる。今回も、この広告を打つことが決まった。

お客様の生の声をもとにしたサイト。

~インターネット制作の挑戦

メディアで展開する表現、内容の検討も始まる。

まず、「勉強会」と呼ばれる会議で、展開するメディアに関わるすべての制作メンバーが、バイヤーから商品の魅力をヒアリングする。また、メディアごとに異なる訴求をしていては、お客様は混乱する。そのため、何を打ち出し、どう表現するかなどの基本方針は全メディア横断で検討し、決定。これにより、多様なメディアを活用しながらも、首尾一貫した訴求、案内ができるのだ。

勉強会に出席したメンバーは所属する部門に戻り、ほかのメンバーに商品の魅力や訴求ポイントを伝える。こうして、バイヤーの想いは制作メンバーへ伝搬、拡散していく。そして、特性が異なるそれぞれのメディア制作部門は、そのメディアならではの戦略、表現を考え、実行していく。

インターネット制作を行う松田には、次こそはという想いがあった。情報量の多いページではお客様は見てくれないと、これまでのチャレンジデーでは、情報を絞ることに注意を払った。しかし、思うような効果をあげていなかったのだ。

なぜだろう。松田は、その答えをコールセンターに求める。企画段階でバイヤーや制作メンバーにお客様の意見を反映するのも、コールセンターの大事な役目なのだ。お客様の声を洗い出すと、多機能な電子辞書だからこそ、お客様は自分の求める機能が入っているかを気にしていることが分かった。

お客様がどの機能に惹かれるかはわからない。
ならば、ポイントを絞るのでなく、収録されているコンテンツはもれなく紹介しよう。そう松田は決める。

打ち立てたパターンを捨て去る。

~テレビ企画制作の挑戦

メディアで展開する表現、内容の検討も始まる。

テレビ制作の現場でも、髙田明前社長や塚本などテレビでおなじみのMCも加わっての試行錯誤が続いていた。

電子辞書は定番になるほど取り上げてきた商品。伝え方も、あるパターンに落ち着きつつあった。しかし、制作メンバーにとっても、チャレンジデーは特別な日。1年の中で一番に表現を尖らせたいという想いがある。
新搭載の百科事典を訴求すべきことは間違いない。

では、どう見せたら一番魅力が伝わるか。どのページのどの言葉を選べばすごさがわかるか。まず、テレビ制作のメンバーは勉強会で考え抜いた。並べ方も一から検討してみた。これまでにない巨大なオブジェもつくった。

だが、事前の勉強会で考え抜いたベストが、本当のベストとは限らない。

また、専用チャンネル「ジャパネットチャンネルDX」用の30分番組と、90秒の商品紹介は録画。とことん議論を重ね、最高のものを目指すことができる。それに、電子辞書を紹介するMCは髙田明だ、絶対に妥協しない。収録の場で、カット割り、見せ方、カメラの位置が、さらに検討された。カメラワークが変われば、髙田明はそれに合わせてコメントを考え直した。一言削ることで得られる秒数にもこだわる。

結局、電子辞書の番組収録には5時間を要した。しかし、他の商品で、リハーサルの時間を含めると10時間を超えたものもある。

できることはすべて手を打つ。

~コールセンターの挑戦

一方、越智が率いるコールセンターも、準備に取り組んでいた。

チャレンジデーが始まる深夜0時以降、コールセンターは大量の問い合わせと注文への対応がミッションとなる。そのため、万全の体制を事前に整えられるかが肝となるのだ。

商品の特徴、アピールポイントなどは早いうちからバイヤーと共有、お客様からいただくであろう問い合わせや質問を考え、FAQをつくっておく。

人員配置は、多すぎれば余剰になるが、少なすぎれば対応できない。

コールセンターとして、いつ、どのくらいの電話が入りそうかを、15分単位で予測し、必要な人数を割り出した。それでも当日不足することになった場合に備え、どの部署にどのタイミングで協力を仰ぐかも考えておく。売れすぎた場合の完売告知の内容もそうだ。代替品を紹介することも想定し、何が違うかを説明するための比較表も用意する。

そして、12月22日。町田、氏田、塚本、そして、万全な体制を整え、深夜対応を行うメンバーにあとを託した越知は、自宅で深夜0時になるのを待った。松田は会社で。何か起こっても対応できるよう、0時と同時に手動でサイトの切り替えを行うためだ。

そして、深夜0時。ジャパネットの「挑戦の1日」が始まった。

後編:疾走する24時間。